月夜沢林道


〜かつての定番は、今なお素晴らしき林道〜


月夜沢林道(長野県南安曇郡奈川村〜木曽郡開田村
訪問日:1993年8月、2004年8月


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非常に有名なこの林道。名前も何とも言えず趣がある。10数年程前に訪れた四駆ブームの頃、盛んに四駆の専門雑誌や全国の林道マップなどに決まって取り上げられていた。また「月夜沢林道」と書かれたステッカーも地元で売り出され(今でもあるのかな?)、そのステッカーを自慢げに貼った四輪駆動車をあちこちで見かけたものだ。


1993年8月撮影
当時よく目にしたステッカー。今はもう無いのだろうか。今回も一応探しては見たのだが、見つからず・・・。


私が初めて訪れたのは1993年で、そのブームも下火になりかけた頃だったように思う。信州の林道に行ってみよう、ということで、白骨温泉の帰りに、『上高地乗鞍林道』そして『月夜沢林道』を経て王滝村の『滝越併用林道』を訪れた。朝から雨、というあいにくの天候で、知らない林道へ行くことの不安もかなりあったのだが、せっかく遠くまで来たのだから行ってみようと思い訪れたのだった。この日は合計して50km以上も未舗装路を走るという林道三昧の旅で、今でも私の中には強く印象に残っている。個々の印象で言うと、ここよりいろいろトラブルに見舞われた『滝越併用林道』のほうの印象が強いのだが・・・。月夜沢林道で言うと、林道そのものより、林道を出たところで食べた蕎麦がやけに美味かったことや、一応定番のステッカーを土産物屋らしきところで買ったことのほうが印象に残っている。


1993年8月撮影
雨の振る中での林道走行。いろいろな危険が考えられるので決しておすすめできません。

1993年8月撮影
標高を上げると、ガス!ガス!ガス!


当時の雑誌等を見ると、この林道は路面状態がかなり悪く中級者以上向けとなっている。そのため覚悟していったのだが、実際は思っていたよりも走りやすく、適度に荒れた林道らしい林道というイメージだった。日頃地元の粟柄河内谷林道で鍛えた成果かな??などと当時思ったものだった。ただ雨だったため林道の雰囲気を味わうことができず、通っただけで終わってしまい残念に感じた。また視界も悪く、せっかくの峠の風景も味わうことができなかった。そのため「いつかもう一度天気の良い日に必ず行こう!」と思いつつ10年の歳月が経ち、今回のリベンジとなった。


1993年8月撮影
開田村側の川も、増水で濁流となっていた。

1993年8月撮影
行き所なき雨水が道を流れる。砂や小石を流しそしてえぐれ、大きく割れてゆく〜。


10年ぶりの訪問も北側起点である奈川村から入った。しかし、こちら側は林道起点の看板や道標などが全くなく、また前回訪問時の記憶もほとんど残っていなかったので「本当にここでいいのかいな・・??」という自信のない状態でそれらしきところを探して入っていった。オートキャンプ場を過ぎて川を越えてカーブの手前あたり・・・。ナビを見るとそれらしき方向に進んでいるのでホッとする。


2004年8月撮影
橋を渡ったすぐの所にある奈川村側の林道起点。何の案内も無いのでご注意!


砂防ダムを越えユンボのある広場を越えるあたりから林道らしき雰囲気になる。初めのうちは周りの木々も高くうっそうとした感じの道が続くが、それもやがて標高を上げていくことで日の光がとどき明るくなってくる。今でも林道好きの多くの人が訪れているのだろうか、路面は踏み固められ極めて走りやすい。林道にもいろいろあって、いかにも車の気配を感じないような林道もあれば、頻繁に車が通っているのがわかる林道もあるが、この林道は明らかに後者のものである。


2004年8月撮影
まぁ、何の変哲も無い砂防ダムです。


2004年8月撮影
\地元の小学校生徒が作った砂防ダムのプレートが埋め込まれた記念碑。平成9年12月の完成だそうです。林道を横切るハイキングコースの案内か?道標には「←野麦峠、ブナの森。→川浦歴史の里、野麦峠オートキャンプ場」と書かれてある。


2004年8月撮影
林道を走るとすぐに大きな広場に出る。ここからいよいよスタート、って感じだ。


2004年8月撮影
最初はしばらくは、こういったうっそうとした道が続く。カブトムシがいそうな雑木林だ。


周りの木々の背が低くなり、山肌にはむき出しの岩が目立つようになると路面も小石や落石が多くなり、林道らしい雰囲気になってくる。岩肌から剥がれ落ちた四角く細長い岩、大小さまざまな鋭い落石が目立ち、自然と運転も慎重になる。また、このあたりに『奈川黒川林道』という支線があるが、残念ながらチェーンで塞がれており通行不能。


2004年8月撮影
標高を上げ、そしていよいよ本格的になってくる林道ワールド!


2004年8月撮影
今にも崩れ落ちそうな崖の石。このような規則的な割れ方をなんというのだったか、忘れてしまった。


2004年8月撮影
見よ!この素晴らしき路面状況。これこそまさに林道だ。右写真の分岐、下へ行くと奈川村、上へ進むと開田村。しかし奈川村方面はチェーンがかかって閉鎖されていた。


岩肌がむき出しになってくるあたりから峠までのこの区間は、この林道で最も林道の醍醐味が味わえるところだろう。角ばった落石がいっぱいの乾いた路面、今にも崩れそうな崖、澄んだ青空、やわらかな山なみ、林道脇に咲くいろいろな色の花・・・どれをとっても素晴らしい。これこそ林道である。ライン取りも楽しい。走っていて最高に心地よくなる。そうして楽しさを満喫していると、やがて見えてくる峠・・・。これ以上何を求めるというのだろう。求めるものは、もう何もない、って感じだ。


2004年8月撮影
あるのはガードレールのみ。シンプル!


2004年8月撮影
「適度な荒れ」とは、このことだ


2004年8月撮影
このあたりが、走っていて一番面白いところだ。えぐれた溝や尖った石の落石を避けるためのライン取りなどに神経を使いながら、景観を味わう。相反することを同時に味わえるのだ。


2004年8月撮影
「もうすぐ峠だよ〜〜〜〜ん」と年がいも無くはしゃいでしまいそうなこの風景。左が奈川村から見た峠、右が開田村側から見た峠。みなさんはどちらがお好きですか?


広々とした峠の風景、非常に懐かしい。しかし印象はまるで違っている。以前訪れた時は雨やガスで下界が全く見えなかったが、この日は一転して、青空の下に緑の山なみが見え、その山なみを縫うように走る林道が見える。峠の碑は新しくなっている。以前あった看板はとんでしまい、その外枠のみが残っているのはご愛嬌か。林道や峠は天候によって全く別物に変わってしまう、ということはこれまでも書いてきたが、この風景を見ていると、そのことをまさに実感として感じる。


2004年8月撮影
非常に広い峠の風景。こんなに広かったんだぁ・・。前回の時は天候が悪く、峠の風景を味わうことができなかった。この峠のことを記した真新しい看板がある。右の道標には『月夜沢併用林道終点』と書かれている。ということは・・・


2004年8月撮影
の二つは、キャンプなどを禁止することや、木々を大切にすることなどの注意が書かれている。
の看板には峠について、以下のようなことが書かれている。標高1695mで木曽郡内で最も高い峠である。慶長年間に木曽福島に関所が設けられその間道として利用されたこと。間道はその性格上、月夜の利用が多く、そのために月夜沢林道と呼ばれるようになったこと。また頂上には道祖神や神社の碑があることも書かれている。明治21年峠道大改修、昭和46年に県の奥地林道月夜沢線として改良工事が実施され、昭和51年に工事完了し現在に至っているらしい。なお、この峠は村指定の風俗文化財だそうだ。


1993年8月撮影
11年前は中身があった看板。しかし当時も文字は読めなかった。


2004年8月撮影
看板の中身はもうありません。母さん、あの看板どこに行ってしまったのでしょうね・・・(古い??わかる人にはわかるんだろうなぁ・・)


峠の前後に咲いている白い花を撮影している時のこと。風で揺れ動くこの花のシャッターチャンスをじっとしてうかがっていると、何か足元にたくさんの虫が寄ってきているのを感じた。そしてその虫は足首あたりをチクッと刺した。蚊と蜂の中間のような痛みだ。痒みは無い。こんな虫に出会ったのは初めてだ。少しじっとしていると足元にたくさん寄ってくる。場所を変えてもしつこくやってくる。明らかに人間を狙ってやってくる。蟻よりも小さいくらいで細長く黒いこの虫、一体なんという虫だろう。いろいろな林道へ行ったが、これを見たのは初めてだ。ご存知の方が折られたら、是非教えていただきたい。峠でゆっくりしたかったが、結局この虫のためにゆっくり景観を味わうことができず、また好きな立ちションをすることもできず早めに出発することにした。大事なところを虫に刺されるのは嫌だ。使い物にならなくなっても困る。


2004年8月撮影
峠からの風景。どちらも開田村側だ。見下ろすとつづらおりに延びる林道が見える。山奥深く来たことが実感できる。


峠より開田村側は奈川村側とは対照的に大人しい印象だ。路面もそんなに荒れていない。走りやすい林道だ。これはこれでホッとする。途中で2台オフロード車とすれちがったが、いずれも他府県ナンバー。やはり遠くからわざわざ走りに来るほどの知名度は今でもあるらしい。


2004年8月撮影
峠から開田村側は、未舗装ではあるが落ち着いた路面で走りやすい。 これくらいならやや車高の高い普通車でも十分走れそうだ。


2004年8月撮影
やがて標高を下げるといくつかの橋を渡る。この日は水量もそんなに多くなかった。


こちら側は月夜沢林道を示した道標や看板がいくつもある。そういえば峠に『月夜沢林道終点』の道標があったことを考えると、開田村側起点から峠までが月夜沢林道なのかもしれない。それなら奈川村側にいっさい道標が無かったのもうなずける。


2004年8月撮影
谷を走る林道。道路脇には釣り客であろう車が何台か停められていた。


2004年8月撮影
月夜沢林道の起点を表す看板や道標が、場所を変えていくつかあった。いったいどこが本当の起点なのか??


起点辺りの風景、10年前と変わっていなかった。物置として利用されているらしい赤いバスも当時のままあった。椎茸の原木もあった。とても懐かしく当時を思い出すことができた。あの時の白のビッグホーン・イルムシャー・ショート、今でも現役で走っているのだろうか・・・。気に入っていた車だが故障が多かった・・・。いすゞ車は好きだったのだが、これといいウィザードといいトラブル続きだった。そのいすゞ車も今は乗用車の生産をやめてしまっている。時代の流れを感じてしまう。


1993年8月撮影
10年前の放置バスはこうだった。


2004年8月撮影
10年経っても同じだった。どっちがどっちかわからない・・


この『月夜沢林道』やはり林道好きなら、一度は行ってみたほうがいいと思う。林道の楽しさや醍醐味を十分に味わせてくれる。多少走りづらいところもあるが、慎重に走れば初心者でも十分走れる。ただし訪れる時は奈川村からのほうがよい。峠前あたりでワクワク感を十分に感じることができるからだ。また行きたくなる、そんな林道だった。




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