悟入谷林道


〜蜩の絶え間ない鳴き声が渦巻きのように広がる林道〜


悟入谷林道(三重県員弁郡北勢町)
訪問日:2000年7月


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三重県の最北部、岐阜県との県境付近(岐阜県海津郡南濃町)を走る林道である。この日は南側の林道起点より入ることにした。高く伸びた杉林は、昼でも日が届かず、うっそうとした雰囲気が訪れる者の気持ちを暗くさせる。林道脇に小さな川が流れてはいるものの、日中でも光が当たらない。そしてそのせいか、ごろごろした石の多くは緑色のコケで覆われている。そういった杉林の中を、この林道はしばらく走ることになる。


2000年7月撮影
木々に覆われ、空が見えない状態がけっこう続く・・・。


2000年7月撮影
ご神木、小さな川、緑のコケ、昼なお暗い・・この林道


私は林道走行中、写真は撮るがメモ等は一切取ることはない。だからこういった文を書くときは、写真と記憶だけが頼りである。いい加減なことをするな、とお叱りを受けそうであるが、このアバウトな性格はなんともしようがないのである。この悟入谷林道でいえば、うっそうとした杉林と、山中にある神社の参道の派手なノボリ、異常なほど頭に響いていた『蜩(ひぐらし)』の鳴き声、それと途中支線と分岐するあたりの水溜りにわいていた両生類の幼体、林道を出たところのR25をがんがん走るダンプ、などの印象が強く残っており、肝心の林道の路面状況などほとんど記憶がない状況だ。少なくとも私にとっては心地よいという印象は感じることがなかった。この時の蜩の鳴き声であるが、これはほとんど耳鳴り状態で、頭がくらくらしたのを覚えている。何の鳴き声かと上を見上げると、長く伸びた杉の幹が一点投視法で吸い込まれていき、それと同調するかのように蜩の絶え間ない鳴き声が渦巻きのように広がっていく。まるでホラー映画の幻想的なワンシーンのようであった。林道で怖いと思ったことなど一度もないが、なぜかこの時は「早くここを去ろう」などと感じてしまった私である。


2000年7月撮影
うっそうとした道を抜けると、ひらけた道に出る。この左の支線を行ったところに水たまりがあり、両生類の幼体を見る。路面は平らで砂利道っぽかったような記憶が・・・。


2000年7月撮影
終点近くのあたりでは簡易舗装に変わる。


2000年7月撮影
明治40年頃に植栽と書いてある。90年くらい経っているのか・・。ということは植えた人は当然もうこの世にはいない。林業って長いスパンで地道に取り組まないといけない大変な仕事だ。


林道途中の丸太の看板には

『ここは約1200ヘクタールの国有林が県境養老山地に連なる悟入谷で桜番所跡です。明治維新、桑名藩有林が国有林となったもので付近にそびえるヒノキは明治40年頃植栽したものです。養老山地の県境沿いには古くから岐阜県側に通じる山道があり、桑名藩は(1710年〜1868年)各要所に美濃からの入林者を取り締まるための番所を設けていたもので、往時はここ桜番所の外に八つの番所があったと伝えられています。臨写を高くそびえる。

平成十年三月吉日 三重県森林管理署』

と書かれている。
お!ということは、高くそびえる木々は杉林ではなくヒノキなのか・・・。う〜〜ん、違いがわからない・・・。


※この林道、本当は県外林道なのですが、私が好きな林道なので
林道・廃村滋賀県地図の方にもいれてある次第です。

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