権現谷林道(滋賀県犬上郡多賀町) |
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権現谷林道、この林道の印象といえば「コンクリートの硬く乾いた簡易舗装路と道が押しつぶされそうなほどの圧迫感のある断崖、響き渡る落石の音、路面に転がる多数の岩、ゴロゴロした石灰質の石の川底の水のない川」である。ここには何度か訪れているが、いつもそういった表情を見せてくれていた。 ところがこの日は全く違った。 |
雨が降った翌日、天気は相変わらず不安定で何時雨が降ってもおかしくない、という空の色。とりあえず行ってみようと思って出かけてみた。この日は『滝谷武奈林道』から『男鬼』へ行った後、そのまま『落合(霊仙)』へ抜けて、そこから権現谷林道の起点にある『河内』へと向かう。このあたりは天気の良い日でもうっそうとしてじめじめしている。覆いかぶさる木々で空が見えない。日差しがとどかないのだ。天気の悪い日は更に薄暗いのは言うまでもない。気持ちも重くなる。この地に居住されている人たちは、こういった自然の環境の全て受け入れなくてはならない。私のようにお気楽に訪れ通り過ぎていく、というわけにはいかないのだ。大変だなぁ・・・、なんてことを考えながら過疎の村『落合』を過ぎて芹川上流に出合う。 |
2004年6月撮影 |
2004年6月撮影 |
川の様子がいつもと違う。今まで見たこの川は、水はきれいだが水量は多くなく、ここのうっそうとした風景のイメージを変えるまでには至らない。ただ控えめに流れているだけだった。しかし、この日は違ったのだ。続いていた雨のために水量が増えて力強さが加わっている。それだけではなく川の風景の色合いも明らかに違っている。流れる川面からは白い水しぶきが立ち上がり、さらに水しぶきが柔らかいもやに変わって周りの木々に覆いかかる。いつもは暗色だけで描かれるこの風景が、白くエアブラシで吹き付けたように、淡いトーンを成している。川と木々が分離している普段の風景、この日はしぶきやもやの白っぽさがそれらを一体化させていたのである。まことに幻想的な感じだ。思わず林道に行くことを忘れ川の下流に向かって進んでしまった。 |
2004年6月撮影 |
さて『権現谷林道』だが、芹川に沿って走る道を上流に向かってのぼっていき『河内の風穴』を越えると、程なく道の右手下方に集落が現れる。すぐ横が川、という小さな集落である。普段の水量は少ないにせよ、大雨時などはその浅い川底は脅威ではないだろうか。細くて浅い川底に、雨水や断崖からしみ出た水が集まって流れ込む。何か想像がつかない。 そしてこの川沿いの小さな集落と川の間に走る細い道、その道を超えたところが林道起点となる。 |
2004年6月撮影 |
2004年6月撮影 |
2004年6月撮影 |
林道脇に流れる、いつもはほとんど水のない川、この日は豊富な量の水が流れている。この芹川上流あたりは石灰岩地質のため、石や岩の多くは白っぽい。またそれらが溶け出して川の水も白っぽい独特の色である。前回にも書いたが、まさに緑色の瓶に入ったラムネ水である。やや白く濁ってはいるが透明感十分の水、そこから見える川底の白い石、水深のあるところはなんとも美しい透きとおった緑色、これこそ自然の芸術である。いつもは乾いて無愛想な権現谷の風景、その風景が潤う時を初めて見ることができたのだ。これまでのこの林道の印象が大きく変わったのは言うまでもない。 |
2004年6月撮影 |
2004年6月撮影 |
河内の集落からアサハギ林道出合いまでは、この豊富な水量の風景を見ることができたが、そこを超えるといつもの権現谷林道である。これも前に書いたが、権現谷林道はアサハギ林道出合いを境にして、全く風景が変わる。谷間を走る独特の雰囲気の北側に対し、南側は山の中を走るいかにも林道らしい林道となる。この日もいろいろな思いが湧き出た北側とは対照的に、南側での走行は、ごく普通にあっさりともう一方の林道起点まで走り抜けるものとなった。 |
2004年6月撮影 |
都会でも晴れた時と雨の時の風景はがらりと変わる。こういった自然に覆われた所では、それはもっともっと敏感で、より顕著に現れる。もう全く別物の風景を作り上げてしまうのだ。今回の林道走行は、今まで感じていたその林道のイメージが全く違った印象になってしまった、という意味で非常に思い出深い林道紀行となった。 |
2004年6月撮影 |
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権現谷林道(滋賀県犬上郡多賀町) |
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このページのTOPの写真は、この林道の支線のアサハギ林道から眼下に見下ろした権現谷林道である。見ていただいたらわかるように非常に山深い林道で、鈴鹿山脈の中の高室山、鍋尻山をぐるっと巻いた形でついている。三重県との県境の鞍掛峠にむかうR306にその起点があり、そこから入ると簡易舗装された道が山の奥へとぬっていき、やがて標高を下げてアサハギ林道と出合う。 |
1992年8月撮影 |
1992年8月撮影 |
アサハギ林道は、ここから廃村『保月(正式には廃村ではなく、季節が良くなると住民有り)』『杉』をぬけて再びR307に向かう道で、保月までは未舗装となっている。またその出合いを東に行くと廃村『五僧』と五僧峠に出合う。ここはほとんど三重県境上である。以前はこの出合いから10分程歩いて登っていかないと行くことができなかったが、今は支線林道ができて楽に行けるようになった。この五僧峠は歴史的にはけっこう有名?な所だそうであるが、これについては廃村『五僧』のところで述べたいと思う。もう少し進むと途中、霊仙山へと向かう芹谷林道という支線もある。非常に林道らしい林道であるが、いつも通行止めの看板が置いてある。 |
1992年8月撮影 |
1992年8月撮影 |
アサハギ林道出合いから以北は、簡易舗装の細い道がずっと谷をぬって行く形になっているが、権現谷林道といえばこちらの方が印象が強い。山間をぬってきたこれまでのルートと雰囲気を一変する。コンクリートで固められた簡易舗装、左手には石灰岩質の石がゴロゴロしたほとんど水の見えない細い川(芹川の上流か?)、右手にはこれまた固められた絶壁、あちこちに落石の跡。訪れた時も「カンカラ、コンコロ〜〜〜!(鬼太郎の下駄の音ではない)」と谷に音が響き渡ったので見てみると、私の頭くらいの石がいくつか転がってきて路面に当たって割れていた。勢いづいて落下した岩がコンクリートにぶつかる音がこだまして、なんとも不気味であった。あんなものが頭に当たっていたら痛いどころではない。しかし驚くべきことにここから少し行ったところで、中年の男女数人が川に下りてバーベキューをしていた。ほんの数メートル横に不安定で今にも落石がありそうな絶壁、さらに奥深いため陽もとどかない薄暗さ。実際、すぐ近くにたくさんの落石が転がっている。こういう林道は入る以上、何が起ころうと全て自己責任であるが、あまりに無防備すぎる。注意するのもおせっかいかと思いそのまま通り過ぎたが、ちょっと林道をなめすぎてはいませんか。気をつけねば・・・。 |
この林道を北に抜けたところに河内の風穴がある。道が細いので行くのが困難である(今は道幅がかなり広げられたようである)が、夏なお涼しいその中は快適である。まだまだこの風穴は未知の部分が多いらしく、ここに入って迷い込んだ犬が三重県に現れたやら現れてないやら・・・。ちなみに有料であるので行かれる方は入場料と駐車料をお忘れなく。 |
1992年8月撮影 |
このあたりは石灰岩質のため石の色や流れる川の色など独特のものがある。川の水の透明感に川底の石の白い色がとけあい、なんとも美しい。少し下流に行くと、夏には多くの人が川遊びやバーベキューで訪れる。しかし、やはりその跡には無数のゴミ、生ゴミ・・・。ぼやきたくないが、ついついぼやいてしまうのである。皆さん、ゴミは持って帰りましょうネ |
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