御母衣湖周辺林道


〜見所満載の名も無きショート林道〜


御母衣ダム周辺林道(岐阜県)
訪問日:2005年11月


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ここのところ、やたら岐阜県にはまってしまっている。春からずっと、機会を見つけては岐阜県の廃村や林道を訪れているのだ。何にはまっているかと話し出すと長くなるので、ここでは省略したいと思うが、とにかくはまってしまっていたのである。そんなわけで秋には是非とも岐阜で紅葉が見たい、そういう思いで企画した今回の旅行、予定では『下呂小坂林道』〜『奥有道・口有道』〜『万波』、時間があればR360で天生峠を越えて『加須良』そして富山に入り『桂』・・など訪れるつもりであった。

しかしいきなりつまずくことになる。1年前に訪れた『下呂小坂林道』、今回は逆方向から入ろうと試みたのであるが、道を間違えてしまい大きくタイムロスをしてしまったのだ。結局、何の変哲も無いうす暗い林道をしばらくさまうことになり、気がつけば昼前。今回のメインは『万波』ということもあり、今にも雨が降りそうなことも考慮して『下呂小坂林道』はあっさりとあきらめることにした。まあ、去年も走っているのでいいだろう・・など考えながら、もっときちんと道を調べていればこんなことにならないのに、など一応反省も加えながら車を走らせる。R41をしばらく北上すると廃村『奥有道・口有道』への分岐。線路を渡りいよいよというところで、そこへ向かう一本道の入り口には残念ながら工事の為全面通行止めの看板。何か大がかりな工事がされているようである。これでは仕方がない。朝一番につまずき、またつまずいてしまった。「まあ、よくあること・・」と踏み切り横の牛舎の牛を見ながら再びR41に戻り、またしばらく北上を続ける。


2005年10月撮影
これは前回の岐阜県訪問の際に訪れた廃村『奥有道』。訪れたのが遅かったために着いた頃はすっかり暗くなっていた。

2005年10月撮影
是非見たいと思っていた学校跡もわからずじまい。年内にもう一度必ず訪れたかったのだが・・。


高山市内の混雑を避けるためにいったんR41を離れるが、市街を越えた所で再びR41に戻る。そしてまたしばらく走った後にR360に入り、やがて『万波』へと向かう道へ・・。しかしいまいち気分が冴えない。『万波』に向かいながらも、何か悪い予感がしていたが、それが不幸にも当たってしまうこととなってしまったのである。分岐の道の入り口には、またしても無情の通行止め看板が・・。

通行止め看板に出合った時の私の判断の仕方であるが・・まず、通行止めの原因を判断する。工事中によるものなのか。それか土砂崩れなどが現実に起きていての通行不可能なのか。それとも道の管理が十分できていない為一般車両では危険と判断されての通行止めなのかを・・。工事中の為の通行止めであれば、即座に侵入は諦める。その他の場合は、そのときの状況をいろいろ考えながら判断する。この時は、明らかに工事中ということがわかったので何の躊躇も無く撤退を決めた。


2005年11月撮影
これは有名な天生峠にむかうR360。この辺りは青空が見ることができた。空の青と紅葉の赤が美しい。

2005年11月撮影
山の木々は黄色から赤へ変わろうとしているところだ。谷間には集落が見える。


朝から距離ばかり走っているが、目的地全てにフラれてしまい、さすがに気持ちが滅入る。『万波』はブナの原生林が美しいということで、特に楽しみにしていたのである。今回の旅行の本命であったのだ。何度もため息がでる。まあ、いつまでもめげていても仕方がないので、R360に戻り天生峠を目指し『加須良』と『桂』に次の目的地を決める。峠までの道の紅葉はなかなか美しいものがあったが、連休ということもあり車の通行量もけっこう多く、私の求めるものとはほど遠いものであった。峠にも多くの車が駐車されており、とてもじゃないが降りて写真を撮ろうという気にはなれない。など思っているうちに峠を下り白川郷に近づく。そして富山へと向かう道に入ろうとした時、そこには私の一番の苦手としている光景が・・。大渋滞である。世界遺産にも指定されている白川郷、それに連休、しかも紅葉シーズン、このような時期にこのような所に近づくこと自体が間違いだったのだ。しかしそこを通らなければ目指すところには行けない。朝から失敗続きでめげている上に、人一倍軟弱な私に、渋滞を乗りこえてでも目的地へ行こうという力はもう残されていなかった。


2005年11月撮影
これが廃村『森茂』へ延びているであろうと思われる道だ。リゾート地からしばらくは舗装路である。

2005年11月撮影
その右手に林道への分岐の道がある。いくつかの看板はあるのだが、肝心の林道名の看板は無い。名も無き林道・・である。


結局、岐阜方面に南下し前回の旅行でフラれてしまった御母衣ダムの東側にある廃村『森茂』を、前回とは別のルートで訪れてみることにした。案外こういう時って思いも寄らぬ好結果が待っているものである。予期せぬところで思った以上のものが手に入ったりするものだ、など楽天的に考えながら車を走らせた。そして結果、楽天的に考えた以上に素晴らしい景色を見ることができたのである。つくづく自分は運の良い人間だと思う。気ままな旅行であるがゆえに訪れたラッキーを最後に味わえたのだ。逆転サヨナラホームランである。長々と本編と関係のないことを書いてしまったが、以下がその時の報告である。


2005年11月撮影
道はすぐに未舗装に変わり、上り坂となる。道も草や木々も夕日に照らされて黄金色輝いている。舗装路では見られない彩りだ。

2005年11月撮影
路面は小さな石がゴロゴロ。硬く踏みしめられているので走りやすい。


2005年11月撮影
道巾はあまりないが、背の高い木がないので非常に開放的である。

2005年11月撮影
初めての林道は、この先どうなっているのだろうという期待感いっぱいだ。


2005年11月撮影
起点から、なだらかな上り坂がしばらく続く。その間の景色はずっとこんな感じである。道の脇にあるススキや紅葉・・というかオレンジに色づいた木々が美しい。


2005年11月撮影
逆光に光り輝くススキの穂。いやはや何とも美しい。でも写真におさめるのは難しい・・。この光景はなかなか写真では伝わらないだろうなぁ・・。


2005年11月撮影
道は常に山肌を走る。従って見晴らしはいつも確保されているのである。

2005年11月撮影
光と影の中の紅葉と空の明るさのコントラスト。この時期、この時間でしか見られない風景。


実はこの林道、2日間に分けて訪れたものだ。1日目は時間的に余ゆうがなかったために途中で引き返し、間に豪雨の1日をはさんで3日目に再び訪れている。

御母衣ダムの東側にある集落に入り、そこから廃村『森茂』へと続く道が地図上では示されており、そこを進んでゆく。舗装路である。リゾート地として分譲されているのであろうか、古びた別荘風の建物が見える。別荘地らしきところをいくつか越えると右手に未舗装路の起点が見えた。林道名の表示の看板はない。名も無き林道だ。どこへ行くのかもわからないが取りあえず入ってみた。適度に道は荒れており雰囲気はかなり良い。起点からすぐに目の前に現れたのは、なだらかな上り坂の脇にのびるススキの穂と、それを照らす美しい夕日の光景だ。逆光に光るススキがとても美しい。しばし時を忘れて写真撮影に入る。ススキだけではなく、葉の色を赤やオレンジ色に染めた木々も多い。杉の植林のされている林道と違い、開放的で非常に明るい雰囲気である。それにしてもこの夕暮れに近い時間帯の太陽の光はどうしてこんなに美しいのだろう。光に当たるもの全てを黄金色に照らし、昼間とは全く違った風景を作り出す。光は偉大なエネルギーだ。


2005年11月撮影
所々に見られる紅葉を太陽の日が照らし光り輝かせる。

2005年11月撮影
削られた山肌も路面の石も黄金色に輝く。何度も言うが、舗装路では絶対に見られない光景である。


2005年11月撮影
やはり紅葉と言えばモミジだ。カエデとモミジの違いってご存知ですか?

2005年11月撮影
光が届かないところでは、彩度は大きく落ちてしまう・・。


2005年11月撮影
上り坂のいくつかの大きなカーブを越えたところにある支線への分岐。

2005年11月撮影
看板には、作業道であること、幅員が3mであること、立ち入らないことなどが書かれてあった。


2005年11月撮影
う〜〜ん、この美しさ、写真で伝わるだろうか・・・。

2005年11月撮影
これぞ紅葉!


山肌を削るように作られたこの林道は、常に日が当たり続け眼下の景色も素晴らしい。少し進むと下り道の分岐があるが、これは作業用道路のようで下には杉林が見えている。しかしあまり使われていないのか、ちょっと進むと路面はのびた草で覆われてしまった。すぐに本線に戻って進むと、光が大きく当たる所に出る。夕日の赤い光が紅葉の葉をより赤く変え、眩しく光っている。下を見ると、今まで走ってきた道が赤い山肌に見える。秋の林道らしい風景である。しばしこの風景に見とれ。写真撮影をした。これまでのフラれ続けてめげていた気持ちはもうこの時には消えていた。単純なものである。そしてひと通り写真を撮り、陽も沈んできたのでこの日は引き返すことにした。


2005年11月撮影
山肌をまくように道は続いてゆく。

2005年11月撮影
向こうに見えるのは杉林。色の違いがよくわかる。


2005年11月撮影
e-konの道をゆく〜。しかしこの日はここまでで引き返すことになった。

2005年11月撮影
ふと振り返ると眼下には通ってきた林道が見える。いや〜美しい!


ここからは2日目に訪れた時の様子である(実際は間に豪雨の1日があったのだが)。あいにく天候がさえず、今にも雨が来そうな曇り空・・。1日目のような眩しい光はどこにもない。同じ風景でも、ずいぶんと違って見えるものだ。それでも、この林道がどこまで続くのか見届けたくもう一度訪れることにした。1日目の赤い山肌に見えた道は、彩度を失った赤い山肌の道となっている。そこから更に、なだらかな上り坂を進んでゆく。進むにつれて、轍の部分は見えるのだが背の高い草に覆われた所が多くなる。それらの草が、また道の脇に高くのびた草が車のボディをこする。車の傷に神経質な人なら耐えられないことだろう。


2005年11月撮影
ここからは二日目に訪れた時のものだ。天気はあいにくの曇り。今にも降ってきそうであった。

2005年11月撮影
昨日見た眼下の景色とはずいぶん色合いが違う。


2005年11月撮影
なだらかに上りが続き、開放的なところはどこまで行っても変わりがない。

2005年11月撮影
この辺りまで来ると、轍の間の草が大きくのびてくる。


草に覆われた、と思えばまた開ける。というのを何度か繰り返しながら標高を上げてゆく。上げてゆくといっても、そんなに高いわけではない。そして最後の山場ともいえる、前が見えなくなるほど伸びきった草に覆われた上り道を越えると、視界が大きく開け、林道は行き止まりとなった。わずか5kmにも満たないショートダートの名も無き林道であるが、短い中にも適度な荒れた路面、フロントウインドの視界を遮る程にのびきった草、美しい木々の景色、常に開放的な明るい視界、洗い越し、そして眩いばかりの紅葉・・と十分に私の心を満たしてくれた。頂上でもう少しゆっくりしたかったのだが、残念ながら終点につく頃に雨が降り始めてきたので、本降りにならないうちに『森茂』へと向かう本線へ戻ることにした。


2005年11月撮影
ついにはこんな状態になってしまった。ま・前が見えない・・・。

2005年11月撮影
そこを過ぎるとまた走りやすい路面へと変わった。でも何か削りたて、って言う感じで大雨が来たらそのまま崩れてしまいそうである。


2005年11月撮影
振り返ると、緑と赤が入り混じる山の風景。

2005年11月撮影
そしてついに道は行き止まりとなっていた。景色を味わいたかったが雨も降り出し、何よりガスで遠景は何も見えなかった。


2005年11月撮影
終点の様子。天気が良ければ、ここで昼食・・なんていいだろうなぁ。

2005年11月撮影
これが洗い越しです。2箇所くらいあったと思う。


さて舗装路の本線に戻って『森茂』を目指す。しかし実のところ目的地の『森茂』まで行けるとは最初から思っていない中での訪問であった。確かどこかのサイトで、この道からのアプローチは不可能、道はゲートで閉ざされている、ということを見た記憶があったからだ。地図上ではつながっているのだが、実際は行くことができないというのを知りながらも進んだのは、もしかしたら?という期待と、この辺りの風景を味わってみたかった、ということと、この道では『森茂』には行けないということを自分自身に納得させるためだったからである。


2005年11月撮影
廃村『森茂』へと続くであろう・・本線へ戻る。

2005年11月撮影
この道も少し走ると未舗装路に変わった。思わず拍手をしたくなる。


本線の舗装路は人気の無い別荘地を越えるあたりから未舗装路に変わる。先ほどの支線の名も無き林道に比べると雰囲気はずいぶんと違う。ずっと谷沿いを走り道幅も十分ある。谷沿いといっても暗い雰囲気はまったく無い。あいにくの空模様で空が薄暗いにもかかわらず、道に両脇に広がる紅葉が素晴らしく美しいのだ。路面状況は非常によく普通車でも十分に走行できる。左手に見える川がまた美しい。透明な水、白い路面、深い紅葉、天気がよければ一体どんな光景が広がっていたのだろうと思うと残念でならないが、それでもあまりある美しさは、そんな気持ちを吹き飛ばす。


2005年11月撮影
視界の中は赤、オレンジでいっぱいになる。ここは道巾は十分だ。

2005年11月撮影
橋の脇には大きな木。何の木だかわからないが見事に色づいている。


2005年11月撮影
道の横には清流が流れる。透明な水は木々のオレンジを映し一体感をなす。ひつこいようだが何とも言えず美しい・・。


2005年11月撮影
どうだ!もう何も言うことは無い。ことばにならない美しさ!


やがて道の両側に色とりどりの木々の葉の美しい森が広がる。川を越える橋には大きな樹。そこにももちろん紅葉が光る。真剣にこの林道の入り口にあった分譲地の価格はいくらなのだろう?など考えてしまうほどである。もちろん借金生活の私に購入できるはずはないのだが・・。しばし秋の紅葉に浸りながらのドライブが続く。車を停めては写真撮影。このあたり地質がもろいからなのか、道は少し荒れたりするものの、それが心地よい変化となり私の脳みそを刺激する。左手に川が見える。河原まで降りてみたい気がするが、雨も降っていることでもあるので諦める。この清流、今でこそこういう美しい景色を見せてくれているが、これが集中豪雨などの時期には一変して怖ろしい濁流となり襲いかかってくるのだろうなぁ、などいろいろ考えながらゆっくりと進む。


2005年11月撮影
川は常に道の近くを流れる。というか川に沿って道を作っただけなのだ。

2005年11月撮影
黄色く色づいた木々の葉、道の脇に広がる林の風景。


2005年11月撮影
路肩が弱いのが一目でわかる道。赤く塗られた石が危険を知らせてくれる。

2005年11月撮影
川の横には川。今はおだやかで水量が少ないが大雨の時にはどのようになるのだろう。


2005年11月撮影
大量の水は大きなエネルギーで、いかにももろそうな路肩を大きくえぐってゆくのだろう。


2005年11月撮影
道の両脇には林が広がる。降ってくる雨も道を覆う木々がさえぎってくれる。

2005年11月撮影
何度も言うが・・美しい!


しかし、やはり訪れた無情のゲート・・。この林道は予想通りゲートで先を閉ざされていたのである。しかしこの林道も距離が短い割に見所が大変多く、そして美しい林道だった。いつの日かこの道を最後まで走りきってみたい、そんな気持ちでいっぱいになる林道だった。人もそんなに訪れていないのか、人気のある林道でよく見る忌まわしいゴミ類も全く見当たらない。いつまでも美しい自然を残し、訪れる人々に感動を与えておいてほしいものである。しかしそれも結局は訪れる人次第なのだろう。


2005年11月撮影
美しさに感動していると、いつのまにか目の前にはゲートが・・。ちょうど林道が二股に分かれている所だ。

2005年11月撮影
残念だが仕方が無い。予想はしていたが残念だ・・。・・・残念だ。


2005年11月撮影
振り返ると紅葉のトンネル。光が当たっていれば輝いて見えていたであろうが、それでも美しい。

2005年11月撮影
美しい、でも何かが足らない。何かポイントなる色があるといいなぁ・・。


2005年11月撮影
というわけで愛車を入れてみました。なかなかいい感じになったと思いませんか?とても短い林道ですが、また来たくなる林道のベスト3入りは間違いないと思います。



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