扇山林道、奥山林道


〜桜の季節になると五つ星になる爽やか林道〜


扇山林道、奥山林道(静岡県引佐郡三ヶ日町〜引佐町)
訪問日:2005年3月


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今回紹介する林道は、今年(2005年)になって最初に訪問した林道である。私がよく訪れる林道の多くは冬場は雪で埋もれて通行不能となってしまう。一般道とは違い交通量もなく地形的に危険も伴うため、雪かきなどがされることはなく、ただひたすら春になって雪が溶けるのを待つだけなのである。場所によっては雪崩や崖崩れなども発生しているため、雪が溶けてなくなった後もしばらく道は大荒れとなっていて通行不能の場合も少なくない。雪道を好んで、4輪チェーンでのラッセルを楽しみに林道走行に行く人たちもおられるが、私の林道走行は文科系林道走行のため、そういったことは一切しない。まあ、単に軟弱なだけであるが・・。


2005年3月制作
愛知県境近くに沿うように走る二つの林道。浜名湖花博(静岡国際園芸博覧会)のサテライト会場だった奥山高原を中継するかのように続いている全線を走ると10km近くになる。


春の陽気を感じる中、全く気ままに何の下調べもなく訪れた林道の旅。今まで行った事のない林道に行きたいなぁという気分だけで、別に目的を持って訪れたわけではなかった。気まぐれに高速道路に乗り、気ままにインターを降りて、そこで地元の本屋さんで降りて調べよう、という甚だいい加減な気持ちで出かけたのである。「雪の残っていない地域へ行こう」ということで降りたインターは、東名高速の浜松西インターである。そこでさっそく本屋を探し地図コーナーへ行って立ち読み・・。しかし私が探していた林道情報の豊富な愛読の地図が見当たらない。仕方ないので他の地図で林道を探すが、一般の地図になかなか林道は載っていない。う〜〜ん、あの地図を持ってくればよかった・・などと後悔しても仕方ない。そこで奥の手を使う。デジカメデータ保存用にと持ってきたノートパソコンである。FOMAにつないでインターネットに接続し近隣の林道を検索する。するとこの近辺に、聞き覚えのある名前の林道が見つかった。それが今回訪問した『扇山林道』と『奥山林道』である。「いやぁ〜、モバイルは便利なものだ」などと自己満足に浸ってばかりはいられない。以前から名前は知っていた林道であるが、どんな林道であるかは全くわからない。ただダートがまだ残っているということだけが記憶に残っていたのである。まあ、未舗装路でさえあればいいか、ということで他に考えることもなく決定となった。

浜名湖の北側で静岡県と愛知県の県境近くに位置する二つの林道であるが、『扇山林道』は7kmあまりの全線未舗装路である。『奥山林道』は未舗装であるものの僅か2kmあまりしかなく、オマケって感じの林道である。この二つの林道は奥山高原を間にはさみ、それぞれ東西に延びている。奥山高原から東に向かって延びているのが『奥山林道』で、西に延びているのが『扇山林道』となっている。だが訪問時は何もそういった情報はなく、ただ「未舗装路であろう・・」という感じだけで訪れたのであった。


2005年3月撮影
山腹に広がるみかん畑。このあたりの山腹一面にみかん畑が作られており、なかなか他では見られない風景だった。

2005年3月撮影
畑と畑を結ぶ道は、舗装未舗装が入り混じって迷路のようになっている。


さあ、いよいよ『扇山林道』目指して出発・・となったのであるが、ナビを見ても林道の起点がわからない。地図上のそのあたりを見ると、なんだか細い道が入り組んでいるところがあったので、たぶんこれだろうと思って、そこを目的地点として向かうことにした。ナビは便利だなぁ・・なんて考えながら、案内に従っていくと低い山が視界に入ってきた。その山腹は段々畑になっているのか、何だかにぎやかな感じになっている。近づいて見ると、それが「みかん畑」であることがわかった。そういえば、ここは三ヶ日町。三ヶ日町といえば社会の時間に三ケ日遺跡というのを習った覚えがあるが、それ以外に有名なのが「みかん」だ。「三ケ日みかん」と大きく書かれた箱詰めみかんを、私の地元でもその季節にはお店でよく見かける。それにしてもなかなか印象深い光景だ。まわりの山のすべての斜面一面みかん畑が広がっている。残念ながら実のなる時期ではないのでオレンジ色のおいしそうな実を見ることはできなかったが・・。なるほど〜、ここで採れたみかんが全国に出荷され、多くの人に食べられているんだなぁ・・などと、思うと今年の冬は「三ケ日みかん」を買ってみようかな、などと考えてしまう。果実の実る季節のここの風景は見事なんだろうなぁ・・。


2005年3月撮影
「奥浜名自然歩道」の地図。ハイキングコースとして整備されているようだ。

2005年3月撮影
コースはいくつもあり、山登りだけではなく廃寺巡りなどもできるようだ。


2005年3月撮影
眼下に見下ろすみかん畑、そして遠くには浜名湖を見ることもできる。このあたりの展望はなかなかのものである。

2005年3月撮影
よく見る小さな青い花。緑の葉っぱと青い花は、紛れもなく春の訪れを感じさせてくれる。


ところがこのみかん畑をつなぐ道がなかなかのものだった。道巾が狭い上に迷路のように入り組んでおり、ナビどおり進んでも全くあてにならない。やっと林道入り口らしきものを見つけて入ってみても、その行き先はみかん畑。こっちかな?などと進んでみても、その行き先はまたもみかん畑。今度こそ正解だろう、と思って進んでみても、その行き先はみかん畑。何度も「ここだろう」と思って入った道であるが、全てがみかん畑に通じる道であった。結局小1時間ほどその中をウロウロしても見つからず、林道探しをあきらめて周辺道路をドライブすることにした。


2005年3月撮影
『奥山林道』
『奥山林道』の北側の起点。陣座峠を越えてすぐの所にいきなり現れた。

2005年3月撮影
『奥山林道』
起点脇にたてられていたであろう案内看板がちぎれて無残な姿となっていた。


2005年3月撮影
『奥山林道』
かすれてはいるが、古い道標には「奥山林道」の表示があった。

2005年3月撮影
『奥山林道』
林道走行時の注意を促す看板。安全運転で行きましょうネ。


山間の舗装路を快調に走って瓶割峠を越えて愛知県に入り(実はこの時、峠手前の『扇山林道』の起点を通り過ぎてしまっていた)福津峠も越える。そして再び静岡県を目指して車を走らせた。すると陣座峠を越えたあたりで林道らしき入り口が・・。「お!こんな所に林道がある」と思って入ってみたところ、道標ならびに壊れた看板がある。そこには『奥山林道』と書かれていた。「おお!こんな所に奥山林道起点が・・。」と一度はあきらめかけた林道走行であるが、予期せぬ形で復活し実現のはこびとなる。いい加減にしていても何とかなってしまう・・、これはまるで私の人生そのものだなぁ・・なんて考えながら車を走らせる。


2005年3月撮影
『奥山林道』
道は固く踏みしめられ非常に走りやすい。普通車でも十分に走る事ができる。


2005年3月撮影
『奥山林道』
逆に言うと、四駆乗りには簡単すぎて面白くないだろう。スリルを期待してはいけません。


2005年3月撮影
『奥山林道』
起点すぐの所にビューポイントがあった。この日は天気が良かったため最高の景色を提供してくれた。

2005年3月撮影
『奥山林道』
連なる低山。青い空。思わず『空気が美味しい〜!」と言いたくなる。


2005年3月撮影
『奥山林道』
2kmの短い林道だが、ほぼ全線にわたり十分な道巾が確保されている。


2005年3月撮影
『奥山林道』
常に空が見える、解放的な林道だ。


道は未舗装であるがフラットで非常に走りやすい。杉林はあるもののうっそうとした雰囲気はない。山奥深いという雰囲気もない。いつも行っている林道とはだいぶん雰囲気が違っている。少し走ってちょうど上りのカーブに差し掛かったところで急に対向車が現れ、思わずブレーキをかける。こういう林道には何とも不似合いな白のピカピカの高級セダンタイプの車だった。すれ違いできないため。下り坂だがバックして道を譲る。しかし十分すれ違いできそうな所まで下がっても、一向にこちらに向かってこようとしない。すれ違うその場所に水溜りがあってぬかるんでいるからである。まるで高貴な王子様である。汚れるのを拒否されているのだった。こんな車が何でこんな所に入ってきたのだろう?なんて考えながら車を走らせ先を急ぐと、わずか2km程進んだところで林道が終わり舗装路に出てしまった。そしてあのような車が林道を走っている理由がそこでわかった。そこには「奥山高原」という施設があったのである。たくさんの車が駐車場から溢れ路上駐車をしている。先ほどの高級セダンもここからの帰りなのであろう。遠い道を引き返すより、未舗装であるが近い道を選んだのだろう。後で調べるとわかったことであるが、この「奥山高原」は浜名湖花博(静岡国際園芸博覧会)のサテライト会場だったそうである。納得である。こうして『奥山林道』はわずか2kmで終わってしまった。


2005年3月撮影
『扇山林道』
ちょっとわかりにくいが、右側が『奥山林道』、まっすぐにいくと『扇山林道』起点である。

2005年3月撮影
『扇山林道』
起点は舗装されているが、すぐに未舗装路となる。脇には林道の看板と道標がある。


2005年3月撮影
『扇山林道』
この道標もかすれてはいるが「扇山林道」と読むことができる。

2005年3月撮影
『扇山林道』
『奥山林道』の北側起点で無残な形になっていた大きな地図だが、ここでは健在であった。


2005年3月撮影
『扇山林道』
交通量もけっこうあるのだろう。この林道も全線にわたりフラットで走りやすい。

2005年3月撮影
『扇山林道』
絶景のビューポイント。天気がいいのはいい事だ。しかしこの季節は花粉に悩まされる・・。


2005年3月撮影
『扇山林道』
なんと爽やかな林道だろう。青い空に路面の土の色・・。夏になると道の脇は緑の草で一杯になるのだろう。

2005年3月撮影
『扇山林道』
木の影と白い路面のコントラストが美しくないですか。


何とも物足りない気持ちでふと見ると、もう一つの林道の起点を見つけた。これが『扇山林道』の起点だった。あまり期待してはいけないなぁ・・と思いつつ入った『扇山林道』、道は同じようにフラットで走りやすい。しかし先ほどとは違い距離はそこそこあった。景観も悪くない。適度なビューポイントもある。未舗装路ではあるがフラットで固められているため、林道特有のスリルを味わうなどは全くできないが、それなりに雰囲気を味わうことはできた。


2005年3月撮影
『扇山林道』
支線脇にある道標。

2005年3月撮影
『扇山林道』
いくつかの支線があるが、すべてチェーンがはられて進入禁止となっていた。


2005年3月撮影
『扇山林道』
道の脇の樹は全て桜だ。桜の咲く季節は桜のトンネルが完成する。


2005年3月撮影
『扇山林道』
満開の頃に訪れる人は幸運だ。でも、多くの車が訪れ、まさか渋滞なんてことには・・


何よりもこの林道のおすすめポイントは「桜並木」があるところだろう。なかなか林道でこういう光景は見られない。眼下にみかん畑や浜名湖を見下ろしながら、道の脇に咲き誇る桜を味わう。なかなかのものではないか・・。普段は何ともない林道でも、桜の季節には五つ星の林道に変わる。そんな林道が『扇山林道』である。林道初心者や手軽に自然を味わう、そんな人たちにおすすめの林道だ。でも、十分の道幅といっても所詮は林道の狭い道。花見をする時は駐車場所に気をつけましょうね・・などよけいなお世話をしてしまう、そんなほのぼのとした林道だ。


2005年3月撮影
『扇山林道』
林道の西側の起点。瓶割峠の手前にある。私は見事に見落としてしまった。

2005年3月撮影
『扇山林道』
手前が瓶割峠、下ると三ケ日町方面だ。ダンプが時折通るが快走路である。


2005年3月撮影
『扇山林道』
峠にはセメントの原石山?がある。ダンプが出入りしていた。


今回の林道旅行、思いつきだけで行って、それなりに林道の雰囲気を味わうことができたが、やはり林道旅行をするのであればメインの林道をきちんと決めて、そして十分に調べてから行ったほうがいいようです。


2005年3月撮影
赤丸印から赤丸印が『扇山林道』である。このあたりはどこを走っても浜名湖が見え、ドライブにはなかなかよい。決してワクワクするような林道ではないが、のんびりと景色を味わいたい時などに訪れてみてはいかがだろうか。デートなどにもいいかも、ですよ。


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