町道高嶺線


〜尾根を走る爽やか林道〜


町道高嶺線(長野県上伊那郡高遠町)
訪問日:2005年7月


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2005年7月
「県外林道地図」とあわせてみていただくと、位置がつかみやすいと思う。『町道高嶺線』のすぐ東を走るのがR211である。


『町道高嶺線』、中央自動車道の岡谷JCTを頂点とした三角地帯の頂点の少し下あたりを南北に走る林道である。地図を見ていただくとわかると思うが、西からR152、『町道高嶺線』『黒河内林道』の3本の道路が南北(縦)に並んで走っている。厳密に言うと『町道高嶺線』と『黒河内林道』の間には、川沿いにR211というのが走っているのであるが、今回はそこは走っていないので、その様子はわからない。この地域にはこの他にもいくつか林道があるが、いずれもインターからも近いのでアプローチしやすい。まとめて走ってみるのも面白そうである。


2005年7月
林道起点辺りから撮ったところだ。道は広々としている。

2005年7月
起点方向を撮るとこうなる。すぐに未舗装に変わっているのがわかる。


2005年7月
いつもの林道の看板とはちょっと違う標示看板

2005年7月
なんともまあ走りやすそうな路面である。これだけ雑草もなくフラットな道ということは、通行する車も多いということなのだろう。しかし今回は一台もすれ違うことはなかった。


『女沢林道』の項でも書いたが、ここを初めて訪れたのは今から10年近く前のことだ。その時は『陣馬形林道』『女沢林道』とセットで訪れたのだが、『陣馬形林道』は昨年夏に訪れたところなので、今回は『女沢林道』『黒河内林道』そして『町道高嶺線』の組み合わせで訪れることにした。 ところがこの『町道高嶺線』、「どんな林道だったかな・・」と思い起こそうとしてみたのだが、なぜか起点付近の九十九折の道以外は何も思い出せない。印象深い風景があったなら憶えているはずである。そんな訳なので「たいした林道ではなかったのかな、でもまあ行ってみよう・・」なんて思いながらの再訪となった。ところがいざ走ってみると、これがかなり素晴らしく、思いもよらぬ嬉しい誤算となって、『女沢林道』でやや沈みがちだった気持ちを思い切りHAPPYにしてくれた。人間(私?)の記憶など本当にいい加減なものだ、なんてつくづく感じてしまう。


2005年7月
終始このような走りやすい路面状況が続いてゆく。

2005年7月
道も開けており、空が広く見える。日が暮れようとしている時間帯なので残念ながら見えないが・・。


2005年7月
向こうに見える山は何という山か・・・わからない・・ちゃんと調べろよ・・


2005年7月
青空が見えるように写っているが、これは薄暗く写った写真を大幅に修正しているからだ。

2005年7月
林道によくある「高い崖、もろい崖」もほとんどない。


さて今回の訪問であるが、前回訪問時の南側からのアプローチとは反対の北側からのアプローチとなった。『女沢林道』で南北に走る山を西から東に越え、『黒河内林道』で北進し、『町道高嶺線』でそのまま一気に南へ下るというルートをとったからである。すでに時刻は17時半、薄暗くなりかけた中でのスタートとなった。『黒河内林道』を出て、芝平峠を越え、車がほとんど通らない舗装路を走ると未舗装路への分岐がある、そこがこの林道の北側の起点となっている。 長野県の多くの林道がそうであるように、道幅は十分だ。尾根を走るこの林道は、大部分が開放的な雰囲気で明るい。訪れたのが日の暮れかけた時刻でなければ、更に強く明るい爽やかな印象を受けたことだろう。路面はフラットでかためられ、非常に走りやすい。道幅の余裕とこの路面状況、滋賀県であれば舗装のための道ならしという感じなのだが、長野の林道はこの状態のままで、舗装されることなく保たれ続けられている。まことにうらやましい限りではないか。広大な山間面積を誇る長野県や岐阜県の余裕を感じる時である。


2005年7月
このネットは何のネットだろう?鹿などに苗木を食い荒らされないようにするためのものだろうか。

2005年7月
大体はこのような景色が続く。緑、青空、土の色、すべてが視界に入ってくる。風が頬を撫でる・・爽やかな気分になる。


尾根を走る道から見える開けた視界は、景観も申し分ない。しかし尾根づたいの林道が全てそうだというわけではない。その植生によっては景観は大きく変わるのだ。杉などの背の高い木が植林され日差しから遠ざかると、明るい開放的な雰囲気は失われることとなり暗くうっそうとした雰囲気となる。もちろん視界がさえぎられることで景観を味わうということもできなくなる。今はこの林道、さえぎるものが全くなく、見事なまでに明るく美しい。本当に満足な気分にさせられる。ところが林道横の見晴らしのよい斜面を見ると、短く刈られた雑草の間には苗木が伸びているのが見える。何が植林されているのかはわからないが、やがてその木が成長する頃になると景観は大きく変わることになるのかもしれない。


2005年7月
刈られた斜面は、植林されていた樹が全て伐採され、そのあとに新たに苗木が植えられた、ということなのか・・。

2005年7月
あちらに見える立ち木は、伐採されるのを待つ木々なのか・・。


2005年7月
など考えていると、向こうに何かが見える。不自然な形の樹・・。


2005年7月
お!まるでキリンじゃないか!なかなかやるなぁ・・・。


林道はアップダウンも特になく、この開けた雰囲気のまま続いてゆく。しばらく走ると短く刈り取られた斜面に不思議なものが見えた。そこだけ不自然に木が残されている。遠くから見ると、まるで動物園でよく見る「キリン」のようである。非常にユーモラスだ。意識的にされているとしたらなかなかのものだが、実はどうなのだろう。残され方を見ると意図的だと思えるのだが・・。 こうして荒れた箇所も特になく、尾根づたいに常に開けた道は心地よい視界を確保しながら進んでゆく。日が暮れかけて青空が既に灰色になりつつあるのが残念だが、もしここに青空が広がっていたなら、これはもう文句のつけようのない風景となったことだろう。明るく爽やかで開放的な気持ちでドライブできるのは本当に最高だ。


2005年7月
何度も言うが、本当に走りやすい林道だ。ガレ場などもほとんどない。

2005年7月
このような感じで尾根を走り続ける。見晴らしも良いのでついついスピードが・・。スピードの出しすぎには注意!


2005年7月
雨水の流れで細かな砂が流され路面がえぐられ、結果大きな石がゴロゴロなんて林道でよく見られる普通の風景がここでは見られない。

2005年7月
スリルを味わいたいオフロード野郎には物足りなくなる普通の道・・。


2005年7月
手前はハゲ山になっているが、初めて訪れた10年前はこの日見た風景とだいぶ違っていたのかもしれない。


2005年7月
「トモエソウ」オトギリソウ属
花弁がねじれていて、花全体が巴状になっていることからこの名がある。山地や丘陵の日当たりのよい草地に生える多年草。7〜8月、直径5cmほどの黄色の花を開く。花は一日でしぼむ。(「夏の花:山と渓谷社」より引用)


約15kmのこの林道、南側の起点辺りに近づくと九十九折の急坂で一気に標高を下げてゆく。その頃にはもうあたりはすっかり暗くなり、沈む夕陽を木々の間から見ることができた。前回の訪問ではこの坂道を上ったのだが、今回は下ることになった。なおも進むとやがて道は1.5車線の舗装路に変わり、簡易水道の施設や畑が見えてくる。そこには物入れ代わりなのか廃車が停められていた。林道を走っていると放置自動車や不燃大型廃棄物が棄てられているのをよく見るが、ここにある自動車はそのような感じではない。おそらく土地所有者が置いたものだろう。起点の目印としてはわかりやすい。


2005年7月
南側の起点に近づくと道は下りになり、どんどん標高を下げてゆく。

2005年7月
九十九折れの坂道辺りは高い樹で日差しがさえぎられ、あたりは暗くなる。この辺りの風景は、なんとなく記憶に残っていた。


2005年7月
林道には分岐があるが、もう寄り道する時間はなかった。この写真も実際はもっともっと暗いのだが、明るく画像補正してある。

2005年7月
木々の間から夕日がわずかにのぞく。あたりはもうすっかり暗い。


2005年7月
道は未舗装から舗装路に変わり、畑や遠くには集落が見えてくる。

2005年7月
物置と化した古い自動車。第二の人生をまっとうしている。畑の多い田舎では、よく見る風景だ。


2005年7月
簡易水道の施設などもある起点附近。ずいぶんと古びているが、今も現役なのだろうか。

2005年7月
林道出る頃は7時前。ライトなしではもう走れなくなっていた。


道幅も十分で景観も素晴らしく、路面の荒れた所もほとんどないこの林道、のんびりと景色を見たり、道の脇に咲いている花を見たり、ハイキング気分で走るのに最適である。林道脇に車を停め、彼女の手作りのお弁当を食べながら語り合うなど、デートとしてもロマンチックで最高だと思うのだが、いかがだろう。ローダウン車でなければ普通車でも注意すれば十分走れそうな路面、『黒河内林道』『陣馬形林道』とともにデートやハイキングにお薦め林道である。風の強い日などはさえぎるものがないだけに、季節によっては寒い思いをするかもしれないが、気候のいい時に是非訪れたい林道だ。


2005年7月
向こうに見える山々は植林されているようだ。秋の紅葉は難しいのかもしれない。

2005年7月
安心して走れる信州の林道、ということではトップクラスの林道ではないだろうか。


2005年7月
この林道、今度来る時には真夏の早朝に是非訪れて見たいと思う。いや、春の雪融けを待って、一番に訪れるのもいいかも・・。いずれにせよ、また行きたくなる林道であることは間違いない。




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